育毛、養毛、増毛、植毛、と髪を増やすいろいろな方法があります。その方法も各社さまざまで、特許庁には数百件にも上る増毛法が申請されているといいます。そうしたそれぞれの増毛法のなかで、私か最も危険視しているのが、植毛です。
頭皮に人工毛を1本1本植えていく方法ですが、ウィッグより自然に見える、抜けにくい、蒸れないなどの理由によって、この方法を選ぶ人が急増しているというのです。
植毛は手術の際に麻酔を使うため、医師の手を必要とします。そのため、医師が行うのだから安全だろう、などという根拠のない安心感を得てしまうせいではないかと思われます。しかし、よく考えてみれば人工毛を植えつけるのは頭皮です。頭の皮膚なのです。
人工毛の材料として現在おもに使われているのは、外科手術で人工血管などに用いられているもの。丈夫で水に濡れても伸び縮みすることなく、熱にも比較的強く、生体との相性もよいとされ、人体に無害、耐水性、耐熱性、耐薬性に優れた素材であるといわれています。でも、やはりそれは人工的に作られたもの。自分の髪の毛ではないのです。
人間の体にはもともと、体内に入ろうとする異物を排除しようとする防御システムが備わっています。その頂点にあるのが免疫反応です。人工臓器を移植した場合などは、必ずこの最も重要なシステムと闘わなくてはなりません。髪の毛の場合も同じです。
私のサロンには、植毛のトラブルを抱えた方の相談が多数寄せられています。皮膚に外部から異物を入れたために炎症を起こして化膿してしまった方など、その内容はじつに深刻なものです。雑菌が広がれば周囲の正常な毛根までもだめになってしまいます。しかし、植毛した毛髪はいろいろな方法で毛の先を加工してあり、簡単には抜けないように頭皮の奥深くに埋められているのです。引き抜こうとすれば根元から切れ、毛先がそのまま頭皮の中に埋まったままになってしまいます。1千本から5千本も植えてあるわけですから、仮にメスなどで取ろうとするならば、頭皮はズタズタに切れ、髪をつくる毛乳頭の組織は完全にダメージを受けることになります。
私か実際に見た最も深刻なケースは、頭頂部に植毛した跡が化膿して、その一部が局部壊死(皮膚が腐る)の状態でした。まだ20代のお嬢さんです。これまで数え切れないほどたくさんの症例を見てきた私も絶句するほどの悲惨さでした。
植毛といいながら、実際は皮膚移植(生体植毛ともいいます)によるトラブルも報告されています。毛根さえあれば、必ず髪の毛は生えてくるのです。手術を受けてしまってからでは取り返しがつかなくなります。
植毛は絶対にしてはいけません。