脱毛の原因


男性の脱毛は早期に時間をかければ回復する

髪が薄くなるというと、一般的には男性の髪の毛をイメージされることが多いのではないでしょうか。父親の髪が薄いことで、自分もいずれそうなるのではないかと心配するのはほとんどが息子さんで、娘さんが自分の髪の将来を心配しているというのは極端に少ないようです。どうやら「男性だから髪が薄くなる」という固定観念があるようです。

実際に、俗に「若ハゲ」といわれる男性型脱毛には、男性ホルモンが大きく影響しています。この男性ホルモンには皮脂分泌を促す働きがあるため、脂漏性になりやすく、この過剰の皮脂が毛母細胞の働きを抑制し、5アルファレダクターゼという酵素によって若ハゲが起きると考えられています。

動物性脂肪を多くとったり、ストレスがたまったり、夜更かしが続いたりすることによっても、皮脂の分泌は過剰になります。

男性型脱毛を回復させるためには、この過剰な皮脂分泌を抑える食生活と、生活リズムを改善することが必要です。加えて、毛乳頭の周囲の過剰になった皮脂をとれば予防ができ、回復させることも可能になります。ただし、あまりに長い間毛母細胞の働きが抑制された状態になっていた場合は、元のように回復するのに時間がかかるでしょう。

この場合の育毛は、まず、いかに毛乳頭の周りにある過剰な皮脂を取るかということです。皮脂があるかぎり毛乳頭の細胞分裂はズムースにいきません。そのために毛髪が細くなったり抜けたりしますから、ここにいくら育毛剤を塗布したとしても、細胞が衰えるだけなのです。基本的に誤った考え方の育毛法が最近日立ちます。その育毛法によってさら
 


出産後の脱毛は、ストレスが原因

出産後に抜け毛が多くなったことを心配している、というご相談をよく受けます。シャンプー時などにあまりに大量な抜け毛があれば、やはり相当ショックを受けることでしょう。出産後はたしかに脱毛が大量にある場合がありますが、これは自然なこと。ほとんどがまったく心配はありません。

妊娠中の母体は黄体ホルモンの分泌が活発になり、その働きで髪の毛周期のリズムが一時的に変化しています。そのため、普通ならば休止期に入った抜けるべき髪の毛が、そのまま成長を続けるのです。そして出産後、ホルモンが通常の状態に戻ったときに、妊娠中に抜けなかった髪の毛がここで一斉に抜けるというわけです。一度に大量に脱毛したと思われるのはそうした理由によるものですから、タンパク質やカルシウムなど、出産時に消耗した栄養をト分に補給することによって、髪はやがて正常な状態に戻るでしょう。

こうしたこととは別に心配なのは、出産後の女性の生活です。10か月間も自分の体のな かで赤ちゃんに必要な栄養を摂らせてきたお母さんの体は、相当に体力を消耗しています。核家族化か進んだ現在では、完全なもとの体に回復する前から、育児や家事、さらには職場復帰など、いつまでも体を休めていられる状況ではないのが現実ではないでしょうか。

出産後のお母さんの体は、慣れない育児、授乳による睡眠不足など、肉体的な疲労に加えて精神的にも大変なストレスを抱えることになるのです。そうしたことが、新たな脱毛の原因となりかねません。こうして起きる脱毛は、先に述べた心配のない脱毛とはまったく異なります。出産後の女性には周囲の人も十分に協力し、気を配ってあげたいものです。 


脱毛症には、5種類の症状がある

脱毛の原因は医学的には明らかでないため、医師の考え方や治療法もさまざまなようです。ただ、医学的には明らかでないとはいえ、抜け毛の状態を見ることによって、ある程度の脱毛の原因はわかります。

脱毛は症状によって5つの種類に分けることができますから、その症状別に説明することにしましょう。

 

[円形脱毛症]

ある日突然にこの脱毛症状に気づくというのが、円形脱毛症の特徴です。その名のとおり、円形もしくは楕円形の形に脱毛するもので、脱毛している部分とそうでない部分がはっきりしているため、発見したときの驚きが大きいのです。

脱毛が一か所に起こるものを「単発性円形脱毛症」といい、複数か所に起こるものを「多発性円形脱毛症」といいます。かつてはおもに側頭部に発生する単発性円形脱毛症が多かったのですが、近頃は、後頭部の襟足など数か所にできる多発性円形脱毛症も増える傾向にあります。

この円形脱毛症の原因は、医学的には解明されていませんが、主として極度の精神的ショックやストレスによると考えられています。そのため、自律神経が低ドし、頭皮に栄養を送る血管が萎縮するために、毛髪が栄養不足になってしまうのです。

ならばその精神的ストレスを取り除けばよいのでは、と思われることでしょう。ところが、神経の緊張を生む原因は人それぞれで、それも何かひとつだけが原因ということでもありません。いくつもの複雑な要素が絡み合っている場合が多いのです。

円形脱毛症は男女を間わずにあらわれますが、どちらかというと、恋愛問題や結婚問題、子育ての悩みや嫁姑間題、その他の対人関係などをかかえる女性の方が、男性よりもストレスには弱いようです。

最近とくに目立ってきているのが子供の円形脱毛症です。子供たちの世界でも、受験勉強や、友人関係の悩み、親子間の間題など、ストレスのもととなる要素は少なくありません。

[びまん性脱毛症]

円形脱毛症と同様に突然起こるのがびまん性脱毛症です。「びまん」とは「すべての部分で均等に」という意味。円形脱毛症のようにくっきりとした円形ではなく、脱毛の境界線がはっきりしないところで、全体に抜けていたり、あるいは虫食い状態が徐々に広がっていく傾向にあるのが特徴です。

女性に多くみられる脱毛症で、食生活の乱れや、神経過労などによる、甲状腺からの男性ホルモンに代わるものの、過剰分泌によるのではないかと考えられています。しかしこれもはっきりとした原因は特定されていません。

びまん性脱毛症によって抜けた髪の毛は、細くなって、分裂して断毛していたり、ところどころが萎縮してくびれたような状態に特徴があります。これは、血液や栄養分の供給が一時的に停止してしまったり、また再開したりといったことを、繰り返していたことを意味しています。

たとえば、ダイエットで食事制限をして、挫折するとふたたび食べはじめたり、あるいは悩みごとがあって食欲がなくなったかと思うと、急に食べ過ぎたり、といっだ精神的なものや偏っだ食生活などが原因として考えられます。生活のリズムを規則正しく保つようにして、ゆったりとした気持ちをもつよう心がけましょう。

【廠痕性脱毛症】

ほかの脱毛と大きく異なるのが報痕性脱毛です。やけどやケガなどによって、頭皮の表面に傷つけられた跡が残っだために起きるもので、その傷の程度によって、髪の毛の再生が可能かどうか分かれます。

毛乳頭や皮下組織に損傷がなければ毛髪の再生は可能ですが、損傷がひどい場合は、残念ながら再生することはできません。ただし傷つけられた跡が小さい場合には、美容形成手術によって傷痕を小さくし、目立たなくすることが可能です。

「枇糠性脱毛症」

健康な髪の人でも、新陳代謝によってフケは出ます。この枇糠性脱毛は、乾いたフケが大量に出るのが特徴で、抜け落ちた髪の毛の毛根部をよく見ると、ひょろりとしていて、まるでおたまじゃくしの尻尾のようになっています。

このような乾性のフケが大量に出るようになると、密着度の高かった毛根の外壁と、内毛幹鞘という部分の間にフケが入り込んで、内毛幹鞘がしだいに剥がれてしまいます。そしてそれが進行すると毛根部にまで達してしまうのです。こんな状態でシャンプーやブラッシングをすると、髪の毛はどんどん抜けてしまい、そのまま放っておくと生え替わる毛がしだいに細くなっていき、そのうちに全体の髪の毛が薄くなってしまいます。

原因は複合的なものと考えられます。毎日の食生活や嗜好品について見直したり、その他日常の健康に留意する必要があるでしょう。

「脂漏性脱毛症」

この脱毛症も、フケと大きな関係があります。枇糠性脱毛症で出るフケが乾いているのに対して、こちらは毛根部が脂っぽくペタッとしているのが特徴で、文字どおり皮脂の分泌が過剰なことが原因となって起きます。大量に出る脂っぽいフケが毛穴をふさいでしまい、毛穴から外に排出されるはずの皮脂が毛根を包む毛嚢の中にたまって、毛の固着力が弱くなってしまうのです。

この脂漏性脱毛によって抜けた髪の毛根を見ると、毛根全体に皮脂の塊が付着しているのがよくわかります。脱毛の初期ならば動物性の食品を控えることや、野菜や植物性の食品を多く摂るように心がけるなど、食生活を見直して規則正しい生活をすることが大切です。

髪の毛が抜けるとシャンプーするのがこわくなるという人が多いのですが、シャンプーによって抜けるということではありません。後に述べますが、正しい方法でのシャンプーなど、手入れをきちんとすることが必要です。


正常でない抜け毛は、体に何かトラブルがあるのかも

一般的には、髪全体の85~90パーセントが成長期の髪で、退行期の髪が1パーセント、休止期の髪が10~15パーセントの割合であるといわれています。仮に10万本の髪があるとすれば、休止期の髪は1万~1万5千本ほどですから、極端な例とすればこれらはこの休止期の3か月の間、いつ抜けてもおかしくないということになります。

毛周期が正常に働いている頭皮であれば、成長期の毛と休止期の毛は一定の割合に保たれていますから、髪の毛の総数も一定のはず。ですから、シャンプーやブラッシングによって100本ばかり抜けたとしても、すぐに悲観することはないのです。

問題なのは、何らかのトラブルにより毛母細胞の働きが衰え、髪に元気がなくなって、成長期の髪がやせたり抜けてしまったりした場合や、休止期を経て抜け落ちた後の毛根に新しい髪が生えてこなくなった場合です。これが薄毛・脱毛なのです。

なぜ脱毛してしまうのでしょうか。脱毛の原因には、動物性タンパク質の摂りすぎ、胃腸障害、ホルモンの異常、ストレスによる交感神経の異常などが考えられます。しかし残念ながらその根本的なところの原因については、医学的にも未だ解明されていません。

脱毛は病気ではないとよくいわれます。円形脱毛症の患者を診ている皮膚科医でさえも「脱毛症は病気ではなく生理現象」と言い切る人が少なくありません。しかもその大多数が「ハゲは治らない」と考えているようなのです。

以前、私はある皮膚科医に、脱毛症で来院する患者さんは本当に治っているのかどうかを尋ねてみたことがあります。医師のこたえは何ともあいまいなものでした。そんなあいまいさは別の病気であったら許されることではありません。つまり、「ハゲは病気ではないから……」ということなのでしょう。
 このような状況下で患者さんの気持ちはどうでしょう。「治らないかもしれない」という不安にさいなまれ、やがては怪しげな育毛法や高額の養毛剤に手をのばして、結果絶望してしまう人が少なくないのです。先に述べましたが、このような不安感や絶望感などが、自律神経を混乱させ、ホルモンバランスを崩して、症状をさらに悪化させてしまうのです。

白血病などの抗ガッ剤による脱毛のほか、下垂体や甲状腺の機能障害などの分泌系の病気、膠原病や肝硬変でも脱毛症状はあらわれます。また、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患による抜け毛もあります。つまり、薬の副作用や病気の症状としての脱毛は、毛髪がりっぱな体の器官であることを示しているといえます。

このような例がある限り、「抜け毛は病気ではない」などと簡単に片付けてしまうことはできないはずです。脱毛そのものは確かに病気ではないかもしれません。しかし、少なくとも髪の毛が私たちの体から発する何らかの警告であることは否定できないでしょう。

また、これだけ医学が進歩した現在でも、未だ脱毛の原因が解明されない理由のひとつには、髪の毛の発育メカ三スムそのものが、非常に複雑であるということがあげられます。さらには、皮膚科学、遺伝子学、栄養学、解剖組織学などの専門分野での多岐にわたる究明も必要でしょう。それらあらゆる分野において、早期の解明が待たれるところです。 


フケ症になる原因

皮膚はたえず新陳代謝を行っています。これによって皮膚の表面から剥がれ落ちていく角質層がアカで、頭皮から剥がれ落ちていくものがフケです。フケは皮脂腺から出る脂肪 が混ざって形成されています。春や秋はとくに新陳代謝が活発になり、また、若い人ほどフケが出やすくなるのはごく自然なことで、これは生理現象として仕方のないことです。

フケが出るのは当たり前のことですが、あまりにその量が多いとしたら問題です。フケが脱毛の原因になるかどうかというと、実際にはフケが脱毛の原因になることはありません。ですが、フケ症になる原因は脱毛になる原因でもあるのです。フケは、場合によっては脱毛になる危険性があるということがいえるでしょう。

頭皮の角質層のバランスが崩れているときに、フケは出やすくなります。たとえば何らかのストレスを受けた場合、交感神経が緊張して皮脂腺の働きが活発になり、頭皮から分泌される皮脂の量が増えます。そして過剰に分泌された皮脂は、頭皮を細菌が繁殖しやすい不潔な状態にしてしまうのです。

また、動物性のタンパク質を摂りすぎるなどして食生活のバランスを崩すと、胃腸障害を起こして頭皮に栄養が行き届かなくなります。正常な新陳代謝が行われなくなったところへ皮脂の分泌が過剰になると、頭皮はひどいかゆみに襲われ、これは頭皮が炎症を起こしているのと同じことになります。無意識のうちに頭を掻けば炎症を悪化させ、掻きすぎると頭皮に傷をつけてしまい、細菌が侵入して化膿してしまう場合もあるのです。そして、
毛を製造する毛乳頭までが化膿してしまうと、もうそこからは二度と毛が生えてこなくなってしまう恐れもあるのです。

フケはシャンプーすることによって、きれいに洗い流せると考えられがちですが、じつはそう簡単ではありません。毛穴いっぱいを髪の毛の1本1本がふさいでいるために、その部分の古い角質層は剥がれにくく、毛穴に残ったフケは、ただそのままシャンプーしただけではなかなか落ちないのです。きれいに
落とすためには、シャンプー前によくブラッシングしてフケを浮き立たせておき、髪の汚れとともに洗い流すことです。

髪の毛も頭皮も、正常に新陳代謝が行われることによって、皮脂が適度に分泌され、潤いやしなやかさが保たれます。フケが気になりはじめたら、まず頭皮を清潔に保ち、そのうえでそれが健康的なフケなのか、要注意のフケなのかを見極めることです。 


頭皮を健康な状態に保つことが薄毛・脱毛対策

私たちは日々、さまざまな汚染物質が存在する環境のなかで生活しています。車の排気ガズ、雑踏のなかに舞い上がっているほこり、タバコの煙、さまざまな雑菌や病原菌、さらには化学物質が含まれた食品の数々。

こうした生活環境のなかでも人間が何とか生きていられるのは、ホメオスタシス(生体恒常性)のもと、私たちが生まれながらにして備えている体内機構のためです。ここでいう体内機構とは血液中のリンパ球が外から侵入してきた菌に対する抵抗力をもつように働く免疫機能であり、病気やけがなどを治そうとして自らの細胞を活性化させる自然治癒力です。

たとえば空気中には無数の細菌やウイルスがありますが、それらの体にとって害があるものが侵人してきたとき、血液中にあるリンパ球がこれらに対して抵抗力をもつように働き、外敵から自分の体を守ります。また、たとえば転んで擦りむいたりしても、傷が軽ければ細胞は自然に再生されるのです。

皮膚や頭皮にもこれらの精巧なメカニズムが備わっています。その働きの中心を担うのが皮膚の最も外側にある角質層。顕微鏡で見ると平板な一枚の岩のような形をした角質層は、それ自体はすでに活動を停止した細胞です。新陳代謝を繰り返して、真皮から表皮へ、表皮から角質層へと移行してきた細胞内には、ケラチンと脂質が混じり合った「ケラチンパターン」と呼ばれる緻密な構造が備わっています。

このケラチンパターンはPH5.6~6.2という弱酸性を維持し、外部から侵入してくる有害物質を防ぐ働きをします。また、角質層には水分を体外に逃がさない役割もあるため、60パーセントが水分といわれる人間の体から、水分が蒸発してしまわないようにするという重要な働きもしているのです。

角質層の細胞構造が壊れると、保湿と防御という2つの機能が同時に低下し、水分は無防備に体外に排出されて、細菌などの有害物質が体内に入り込んできてしまいます。アトピー性皮膚炎などによって表皮の働きが悪くなると、細菌感染が起こり、カサカサやジクジクの皮膚になってしまうのは、こうしたことからなのです。同じことが頭皮に起きると、当然ながら髪の毛も正常ではいられません。髪の毛が健康であるためには、その土壌の役割をする発生もとの頭皮が健康でなければならないのです。


髪の生まれ変わりと毛周期

人間の毛穴が、年齢を重ねるごとに増えるということはありません。生まれたばかりの赤ちゃんは全身をうっすらと産毛におおわれていますが、これも2歳くらいまでにはすべて抜け落ちてしまいます。人間が生まれた時点ですでに毛穴の数は決まっていて、最初に生えていた産毛は、たとえていえばこれから毛を生やすための土台のようなものなのです。そして1度抜け落ちた毛は、最初は3年くらいで、2回目は4~6年くらいの寿命で生え代わりながら、頭部、眉、績の下、陰部付近などに限って、しだいに子供の毛から大人の毛へと太く濃くなっていきます。

人間の髪の毛は多い人で15万本、少ない人で6万本あるといわれ、頭の大きさにもよりますが、人まかに計算すると10万5000本くらいが一般的な本数とされています。薄毛・脱毛が気になりはじめると、毎日のシャンプーやブラッシングのときに抜ける髪の毛が気になりますが、人間の髪は健康な人でも1日に50本から60本は抜けているのです。

髪の毛は、生えてから成長期に太く長く伸び、退行期に入ると毛の根元の角化か始まり、休止期を迎えて自然に抜け落ちる、という一定の寿命があります。この寿命を全うして抜けるのが健康的な髪の一生なのです。そしてだいたい3か月くらいで、同じところからまた新しい毛が生えてくるという繰り返しをしています。これを毛周期と呼んでいます。

人間の毛周期は平均5年前後です。成長期には皮膚の下で毛を包み込んでいる毛包も長く、真皮を貫いて皮下脂肪組織にまで伸びることがあります。成長期の毛を抜くためには70~80グラムの力を必要とするほどですが、毛根が短くなる退行期を経て休止期に入ると、毛包の長さは成長期の半分ほどに縮み、毛根部分は丸くなって、20グラム以下の力で簡単に抜けるようになります。

生えてから5~6年伸び、抜けた後は3か月休み、毛周期は生涯きちんと守られます。現在の平均寿命でみると、一生に12回ほどこのサイクルを繰り返すということになるのです。こうして髪全体から抜け毛の割合を見てみると、成長を続けている髪が全体の80~90パーセントとし、休止期に入っている髪が1日50~70本実際に抜けているとすると、髪全体の0・1パーセントにも満たないことがわかります。

毛乳頭から栄養を受け取った髪は健康な人の場合、1か月に約1センチほど伸びます。ということは、11本の髪の毛を5年の毛周期を終えるまで仲ばし続けるとしたら、60センチの長さになるという計算になります。

問題はその5年間に起きてしまう髪のトラブル。環境汚染や有害物質を含む化学製品があふれている今日の生活のなかでは、髪を常に健康な状態に保つのは大変なことです。そうした環境下においても、頭皮がよい状態で維持され、正しい手入れをして髪を大切に育てることができれば、長い髪を美しく保つことも可能なのです。 


皮膚の新陳代謝と密接な関係にある髪の成長

私たちの皮膚は常に新陳代謝をしています。髪の生え代わりはこの皮膚の新陳代謝ととても密接な関係にあるのです。皮膚は表面に近い順に、角質層を含む表皮、真皮、皮下脂肪組織の3つに分けることができます。

表皮、真皮、皮下脂肪組織のうち、髪に直接関係してくるのは表皮で、その厚さは1ミリ弱。表皮の最も深いところでは、基底細胞とメラニン細胞が絶えず新陳代謝を繰り返し、細胞は順に下から上へ移動して最終的に角質層に達してから、やがてアカとなって剥がれ落ちます。そのサイクルは約28日ですから、ほぼ1か月で表皮が生まれ変わっているといってよいでしょう。

真皮はおもに皮膚線維で、皮膚に弾力を与える役割をしています。血管や神経、汗腺などの重要な器官はこの真皮の中にあります。発生学的にいうと、髪の毛が生えてくる毛穴は、この真皮が陥没してできたものなのです。

毛穴の底部には、真皮の下の方からタマネギの根のような丸い突起が出ています。これが毛乳頭と呼ばれる部分で、その周囲を毛母細胞とメラニン細胞が密生して取り囲んでいます。毛乳頭から栄養を得た毛母細胞は子細胞をつぎつぎと作り、上へ上へと伸びていきます。これが髪の毛の発生です。つまり、髪の毛は皮膚が新陳代謝を繰り返すのと同じような発育過程をたどるというわけです。

頭皮の上に出ている部分を毛幹といい、頭皮の下にある部分を毛根ということから、髪の毛が1本の樹木のように想像できますが、これはあまり適切とはいえません。髪の毛には栄養を補給する血管もなく、それ自体が細胞分裂することもないのです。また毛根とはいっても、植物のように一度根っこを抜けば2度と生えないということはなく、毛根ごと引き抜いたとしてもまた、同じところから髪の毛は生えてきます。

私たちが髪の毛と呼んでいるのは、皮膚でいうと表皮の角質層にあたります。それ自体は成長するわけではなく、皮膚の深いところで新しい細胞がつくられ、外に送り出されてきているのです。


髪の太さと生え方

髪の毛の質は人によってそれぞれ違います。太さについていえば、日本人の髪の太さは、普通0・05~0・15ミリといわれています。しかし、なかには太さが0・06ミリくらいの、いわゆるネコツ毛といった細くて柔らかい髪の人もいますし、逆に0.1ミリ以上もあるような、太くて重い感じの髪の人もいます。0.0何ミリという差ですから見た目ではそれほどわかりませんが、1本ずつをよく見るとその差がはっきりとわかります。

また、髪の毛は成長とともに細い子供の髪から太い大人の髪になり、そして、年齢を重ねるごとに今度は逆に少しずつ細くなっていきます。生理学的にみてそのピークは、男性の場合が20歳、女性の場合が25~30歳くらいです。この年齢を過ぎると、だいたい10歳年齢を重ねるごとに0・03ミリずつ細くなるといわれています。

年齢を重ねて髪が薄くなってきたと感じている方が少なくありませんが、これはこのような理由により、1本1本が細くなってきたために全体に少なくなったと感じるせいでしょう。年齢を重ねることである程度髪が薄くなるのは避けられないことなのです。健康的な生活をしていて1日に50~60本の抜け毛があるのは正常で、心配はありません。

髪の毛の形や生え方は人によってじつにさまざまです。脱毛は白人に最も多いといわれます。色の黒い毛や太い毛の方が毛髪の活力が大きいということかもしれません。一般に東洋人は直毛の人が多いといわれますが、これは、皮膚に対して毛穴が直角になっているためです。縮れ毛は皮膚に対してカーブを描いて生え、ウェーブのかかった波状毛は毛の伸びる早さが中心部と周囲とで異なるために、らせん状になって生えています。

髪の毛はこのように性別や種族によってまったく違う質のものですが、毛穴の総数はほとんど同じで、ケラチンなどの毛の成分もほとんど変わらないのです。人類の誕生から長い年月を経て、環境や食生活などの違いからこのように生え方が変わっていったのかもしれません。


髪の毛の成分と構造

皮膚の表面が角質層、表皮、真皮という三層からできているのと同様に、0.何ミリという髪の毛も、外側から毛表皮、毛皮質、毛髄質という三層からなる細胞によって構成されています。

一番外側にある毛表皮は、細胞どうしが魚のウロコのように重なりあっています。これが、みなさんもよくご存じのキューティクルです。キューティクルは、角化した透明なウロコ状の細胞が強固に重なり合うことによって、汚れをつきにくくし、異物が浸透することを防ぎ、髪の内部からケラチンなどの栄養が逃げないようにガードする役割をしています。

キューティクルが損傷すると髪にツヤがなくなって、枝毛や切れ毛の原因となり、髪の毛がパサついたり、ペタッとした感じになってしまいます。ブラッシングをしていて、ブラシの通りが悪いと感じたら、キューティクルが傷んでいる証拠。早めに手当をする必要 があるでしょう。

2番目の層の毛皮質は、多量のメラニン色素を含む細い繊維質の細胞で構成されています。メラニンは白い肌にとっては、シミ・ソパカズのもとになると嫌われていますが、本来は皮膚を保護するためになくてはならない細胞です。日本人の髪の色が黒いのはこのメラニン色素が多いためで、逆に欧米人のブロンドなどの髪にはメラニン色素が少ないのです。メラニン色素が多いほど光の反射率は低く、少なければ反射率が高くなります。しかも欧米人の髪の毛皮質には気泡が含まれています。ブロンドの髪がキラキラと輝いて見えるのはこのためなのです。

最も中にある毛髄質は、多少のメラニン色素の粒子を含んだ細胞の集合体で、1~2列に並んだ立方体の細胞が、蜂の巣のように並んでいます。その内部には無数の空気穴があり、空気をたっぷりと含んだこの穴が断熱材となって、頭部を直射日光から守る役目をしています。

髪の毛はケラチンというタンパク質でできています。髪の毛1本でおよそ120グラムくらいのものを持ち上げられる強度があるほど、ケラチンタンパクはタンパク質のなかで 最も硬質で丈夫。爪や皮膚の主成分も同じケラチンで、髪の毛はもともと、皮膚の角質を基盤にして変化・発生したものなのです。